ブルーライト研究所 | 光から目と身体をサイエンス by JINS ブルーライト研究所 | 光から目と身体をサイエンス by JINS

近年、パソコンやスマートフォンの
使用が広がるとともに、
注目を集めているのがブルーライト。
このサイトでは、目や健康にどんな影響があるのか、
どのような対策が必要なのかなど、
ブルーライトの正しい知識と付き合い方を紹介します。

ブルーライトとは

ブルーライトは
強力なエネルギーを持った光

ブルーライトとは、太陽光にも含まれている波長が380~500nm(ナノメートル)の青色光のこと。人の目で見ることのできる光(=可視光線)の中でも紫外線並みに強力なエネルギーを持っており、目や身体への負担が懸念されています。

体内リズムをコントロールする

人間の「体内時計」は24時間より少し長い周期で1日のリズムを刻んでおり、地球の自転に合わせ24時間のリズムで生活するのは、体の外部や内部の信号により、リズムを毎日リセットする必要があります。その最も強力な外部の信号が午前中の光です。リセットができないとリズムが後ろにずれ就寝時間や起床時間も後ろ倒しになります。

目の網膜には、視覚に関与し、光の色と、明暗を感知する2つの視細胞が存在します。近年、このほかに「第3の視細胞」(メラノプシン)が発見され、視覚には直接関与せずに、サーカディアンリズムと呼ばれる、睡眠と覚醒を切り替える体内時計にはたらき、睡眠や体内リズムをコントロールする役割を果たしていることがわかってきました。

ブルーライトの刺激の伝達

このメラノプシンが光をキャッチすると、視神経を通じて刺激が視床下部の体内時計の中枢である視交叉上核に伝わり、視交差上核より、睡眠や体内リズムを調整するホルモンであるメラトニンを産生する松果体や睡眠や覚醒の調節を行う視床下部に光照射の情報を伝えます。すると脳が昼と認識して活動性をあげ気分も高揚し覚醒します。反対に光が弱くなると夜と認識して松果体からメラトニンが分泌され、眠気がもよおされます。このメラノプシンが特に強く反応するのが、ブルーライトであることが分かっています。従って、午前中より太陽光にも含まれるブルーライトを浴び、活動性を上げ、夜間は照明などのブルーライトの照射をさけ、眠る準備を整える必要があります。またブルーライトの効果は、光の照度、照射時間、照射タイミング等により影響をうけることが明らかになっています。

ブルーライトが増える現代社会

ブルーライトにかこまれた
私たちの生活

昔の人は太陽の照射とともに生活していたため、ブルーライトを浴びるのは日中だけでした。しかし、近代になってエジソンが白熱電球を発明して照明が誕生してからは夜も明るくなり、人々の光環境と生活リズムは大きく変化しました。

とくに、白熱電球に比べブルーライト成分の発光が強い蛍光灯や、発光ダイオード(LED)の室内照明が登場し、さらにはLEDディスプレイを搭載したテレビやパソコン、スマートフォン、ゲーム機が広まり、身のまわりにブルーライトを発する機器が急増。これによって、生活の中でブルーライトを浴びる量が増え、体内リズムが乱れやすい環境になっています。

私たちの生活は昼夜を問わずブルーライトにかこまれているといっても過言ではありません。

進むマルチデバイス化で、
ブルーライトを浴びる時間は増えている

私たちが1日のうち、パソコン、スマートフォン、テレビなど、あらゆるブルーライトを発するデジタル機器に接触する平均時間は約6時間31分(2023年度)。直近10年間で約73分も増加しています。

ブルーライトは、LED照明からも発せられているため、私たちがブルーライトを浴びる時間は確実に増えつつあるのです。

参照:「メディア定点調査2023」(博報堂DYメディアパートナーズ/メディア環境研究所)より一部抜粋してグラフ作成

ブルーライトが多い3大機器はスマホ、ゲーム機、パソコン

近年LEDが普及したことにより、日常生活でブルーライトを浴びる量が増えています。

ブルーライトの放出量はデバイスごとに異なりますが、中でもスマートフォン、ゲーム機、パソコンは放出量がとくに多く、注意が必要です。また、液晶テレビはブラウン管テレビの3倍以上のブルーライトを放出しています。

ブルーライトの影響と対策

睡眠の質の低下、病気リスクの高まりにつながる

ブルーライトは体内リズムに影響を与える光。以下のような影響を身体に及ぼします。

子どもの目はとくに影響を受けやすい

成長過程にある子どもは、目の水晶体が透明でにごりがないため、大人の目以上にブルーライトの影響を受けやすいと考えられます。また、夜間のブルーライトの照射によるメラトニンの分泌抑制は小児でより顕著であることも判明しています。従って、小児において夜眠る前の時間帯のブルーライトは、大人以上に早寝早起きのリズムを乱し睡眠不足を招きかねません。子供の睡眠不足は脳を含め身体の発達への影響も懸念されます。子供のうちからブルーライト対策をおこなうことをおすすめします。

ブルーライトと上手に付き合おう

デジタルディスプレイ機器から発せられるブルーライトは、目や身体に大きな負担をかけると考えられます。夜間に長時間デジタルディスプレイ機器を使用する際は、以下のような工夫をすることが望ましいでしょう。

ブルーライト対策
  • デジタル機器のナイトモードや明るさ調整機能を使用する。
  • ディスプレイに、ブルーライトをカットするフィルターを貼る。
  • ブルーライトをカットするメガネを使用する。
専門医に学ぶ
ブルーライトと睡眠の関係

睡眠と覚醒コントロールする体内時計への強い影響が解明されてきたブルーライト。
世界的な睡眠医学の権威であり、睡眠とブルーライトに関する研究にも取り組まれている西野精治先生にお話をうかがいました。

  • Q1. 現在の日本人の睡眠とブルーライトの関係について教えてください。
    A1. 日本人の睡眠時間は先進国33か国の中で最も短いと報告されています。子供の睡眠時間も諸外国に比べ最も短い傾向があります。また、1960年代と比較すると、日本人の平均睡眠時間は、大人も子供も1時間程度短くなっており、こういった変化は近年急速におこっています。
    そもそも睡眠は、一日のリズム、特に昼夜のリズムがとても重要です。自然に近い生活であれば、昼間は明るく、夜は暗くなるので、体温や自律神経、ホルモンの働きもそれに合わせて自然と変化し、眠くなります。それが現代の生活では、日没後も強い光に囲まれる環境になっています。いわゆる眠らない24時間社会です。
    睡眠を引き起こすホルモンのメラトニンは、夕方以降に周囲が暗くなると脳の松果体という器官から分泌されますが、目からブルーライトが入ると、松果体でのメラトニン産生、分泌が強く抑制されます。
    メラトニンは、松果体という小さい組織のみで産生され、他のホルモンと違い広く脳内で貯蔵できないという特徴もあるため、夜寝る前に浴びるブルーライトは、即座にメラトニン分泌を抑制し脳を覚醒させ、睡眠にとって大敵なのです。
  • Q2. 近年、子供もデジタルデバイスを利用する時間が増えてきました。
    子供の睡眠習慣をどのように守ればいいでしょうか。
    A2. 子供も大人と同様に、現代は睡眠時間が短い傾向があります。特に、平日に比べ週末の起床時間が遅い子は、慢性的な睡眠不足になりかけている可能性もあります。
    子供は自身で睡眠不足を自覚できないため、睡眠の問題で、イライラする、集中できないなどの症状が前面に出ることも多いです。また、激昂したり、兄弟や友達への暴言といった問題行動が現れることもあります。
    睡眠不足の原因の一つには、スマホやPCの使用が考えられます。現代の子供たちにとっては、デジタルデバイスを使いこなす能力も将来のために不可欠であり、デバイスを取り上げることが一番の解決策とも言い切れませんが、就寝前にいたずらにゲームや、動画を見る習慣は極力改めるようにしてください。また、こういった行動で就寝前に脳を刺激させることも良質な睡眠を妨げます。
    昼は外で日光を浴びさせ、夜は特にブルーライト等の強い光をできるだけ避けることで早寝早起きのリズムを維持できます。保護者が夜更かしだと子供も夜更かしになる傾向があるので、子供だけに押しつけず、保護者自身が睡眠への意識をもって、親子共によい健康、睡眠に良い生活習慣を身につけることが重要です。
  • Q3. 就寝前にブルーライトを避け、より良い睡眠を取るためにどんな工夫やツールが有効でしょうか?
    A3. 睡眠は、割れ物を意味する“FRAGILE”といわれるほど繊細なもの。光だけでなく、部屋の温度、湿度、または心配事や体の痛みなど、様々なことに影響を受けます。逆に言えば、睡眠を良くするアプローチも色々と考えられるということです。
    最近、学童を対象に就寝前にブルーライトカットメガネを使用する研究を行いました。就寝前の3時間の装用を2週間続けてもらうと、1週目より2週目に、就寝時刻や起床時刻が早くなり、兄弟に対する暴言などの日中の問題行動が減少する傾向が見られました。つまり習慣として続けることが大事です。
    デジタルデバイスについているナイトモード機能や、ブルーライトカットメガネのように手軽なものなら、負担なく続けられるでしょう。
    まずは家族全体で、昼夜のリズムを意識して、夜間の照明はブルーライトの成分の多い、蛍光灯やLEDをさけ、寝室の照明は暗くして、ベッドにスマホやタブレットを持ち込まないなどの生活習慣を見直したうえで、その効果を実感して継続してみましょう。
西野精治先生
西野精治先生
医学博士。米国スタンフォード
大学医学部精神科教授。
同大学睡眠生体リズム研究所所長。
著書に「スタンフォード式
最高の睡眠」(サンマーク出版)など。

ブルーライトカットの効果の実験研究の紹介

過度なブルーライト照射への対策として、現在は日常使用できるブルーライトカットメガネなどが手軽に手に入るようになり、またその効果の検証も報告されるようになりました。
ここではその一部を紹介します。